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"シアワセな微熱"
written by花音
真澄さんと結婚して1年。

ちょっと最近熱っぽいなって思うことがあった。
風邪でもひいたのかな?って最初は思っていた。

でもいつもと何かが違う・・・・・・。

そういえば女の子の日が少し遅れていた。

もしかして・・・・・・・。

なんともいえない感情がこみ上げてくる。

(お医者さんに見てもらったほうがいいのかしら・・・)

かといって、産婦人科に行くのは初めてだし・・・・・。

(うーん。どうしたらいいのかしら・・・・)

私は思い切って真澄さんに相談してみた。

「真澄さん・・・私・・・もしかしたら赤ちゃん出来たかも知れないの・・・」

「えっ・・・。もう一回・・・・」

一瞬真澄さんの動きが止まる。

「もう・・・だから赤ちゃんが出来たかも知れないの・・・・」

「そうか。じゃあ明日一緒にお医者さんに診てもらおう・・・・」

「真澄さんが一緒なら病院行こうかな・・・・。聞く所に寄るととっても恥ずかしいらしいから・・・・。」

「君らしいな・・・・。そんなこと心配するのは・・・・・」

そういいながらゆっくり私を抱きしめてくれた。





翌朝・・・・・

真澄さんは休みを取るために、会社に電話をかけていた。
すると突然絶句して、受話器を置いた。

「すまない・・・マヤ。どうしても会社に行かないといけなくなった。かわりに水城くんがお医者さまを連れてこちらに来てくれるらしい。ホントすまない・・・」

申し訳なさそうに私に謝っている。

「いいのよ・・・。だってあなたが行かなきゃダメなお仕事なんでしょ。そんなことでいちいち怒っていたら速水真澄の妻は出来ないわ・・・・」

「ありがとう・・・。もし何かあったらすぐに連絡をくれ。」

「分かったわ。気を付けてお仕事行ってきてね・・・・。」

「ああ・・・。それじゃ行ってくる・・・・。」

私は真澄さんと「いってらっしゃいのキス」をした。





速水さんを見送ってから1時間たった頃、水城さんは心強い助っ人とともに私のもとに来てくれた。

「マヤちゃん。遅くなってゴメンね。なかなか彼女つかまんなくて」

「いえいえ。こちらこそゴメンナサイ。急にお呼びたてしてしまって」

「いいのよ。それよりも彼女のこと紹介するわね。私の幼なじみで、産婦人科のお医者様している有栖川杏子といって、今女性誌やワイドショーで活躍している美人産婦人科医として有名なのよ。だから安心して相談頂戴ね。」

水城さんのあまりの手際のよさに改めてビックリしてしまった。

「マヤさん。初めまして。研修医時代にあなたの舞台見てからずっとファンだったの。だからこうしてあなたのお役に立ててすごく嬉しい!!多分色んな不安があるだろうから、何でも相談してね。」

「こちらこそ・・・。私・・・何にも分からなくて・・・・。多分一杯ご迷惑お掛けすると思いますが・・・・よろしくお願いします・・・」

「それじゃ早速診せてもらうわね。」

「はい・・・」

私は来客用のベットルームに杏子先生を案内した。
多分検査する為の機材も運ばれてきている。

「じゃあ、マヤさん。パンツ脱いで、ベットの上に仰向けになってくれる?」

私は一瞬思考が止まった。

「もしかして産婦人科とかに行くの初めて?」

「はい・・・。」

もう私は首筋まで真っ赤になっている。

「そうかあ・・・・。ちょっと恥ずかしいかも知れないけど我慢してね。」

私は杏子先生の言うとおりにしてベットに横になり、大きなタオルケットをかけてもらった。

「じゃあ、マヤさん 始めるね。」

私はこれから始まる初めての体験に緊張しまくっていた。

「マヤさん・・・。おめでとう。妊娠してるわ・・・。」

「えっ・・・。本当ですか??」

「間違いないわ。先程の話からすると・・・・2ヶ月に入ったところかな」

「うれしい・・・・」

「良かったわね・・・。生まれるまでずっと面倒見るから大船に乗ったつもりで安心して私に付いて来てね・・・」

そして私に一枚の写真を手渡してくれた。

リビングでは水城さんがそわそわしている。

私はもらったばかりの写真を水城さんに手渡した。

「おめでとう・・・マヤちゃん・・・。」

「ありがとう・・・。」

「冴子・・・マヤさんのお仕事なんだけれど・・・・。」

「大丈夫よ。私に任せなさい。時に杏子、何時頃までお休みしたほうがいいのかしら・・・・」

「そうねぇ・・・。私がGOサイン出すまではお休みね・・・」

「あら、何時の間にマヤちゃんのマネージメントに口を挟むようになったのかしら・・・・」

「医師としては当然のことよ・・・・」

二人は今にも笑い出しそうな顔をしながら火花を散らしあってる。

そんな二人をみて私は思わず呟いてしまった。

「おもしろいかも・・・・・」

その途端、笑いを堪えきれなくなった二人は大爆笑を始めた。
それから私たちは水城さんが買って来てくれた美味しいケーキと紅茶でワイワイと色んな話をした。

「マヤさんね・・・検査する時真っ赤になって、緊張のあまりブルブル震えてるの。もし病院に行ってたら卒倒してたかもしれないわね・・・」

「えっ・・・!もっと恥ずかしいんですか・・・・」

私は絶句してしまった。

「もちろん!!でもあの程度で恥ずかしがられちゃ、どうやって赤ちゃんできることしたのかしらねぇ・・・・・」

杏子先生は今にもいたずらっぽい笑みを浮かべている。

「杏子先生のイジワル・・・・そんなこと速水さんに聞いて下さい。」

「マヤちゃん・・・そんなこと聞いたら速水社長に殺されるわ・・・」

水城さんは笑いの渦に飲み込まれていった・・・・・・。

それからも他愛のないおしゃべりの花を咲かせた。





二人を見送って間もなく速水さんが帰ってきた。

「ただいま・・・・。おい、寝てなくて平気なのか・・・」

「赤ちゃん出来てた・・・・」

速水さんの動きが一瞬止まる。

「本当か・・・・」

私は杏子先生からもらった1枚の写真を手渡した。

それは私と速水さんの愛の結晶の写真である。

感慨深そうにその写真を見つめる。

「オレもついにパパになるんだな・・・。」

「私もママになるんだ・・・・・。」

私はふっと思った。
私たちは家族というものに縁が薄かったこと。
でも家族以上の友だちや仕事仲間がいることに改めて気付く。

「ところで恥ずかしくなかったか?」

「すんごく恥ずかしかったわだって、パンツ脱いでいろいろと触ったりとか・・・・」

私は思い出すだけで真っ赤になってしまった。

それから私は今日あった一部始終を速水さんに話した。

「かなり刺激の強い話だなぁ」

真澄さんは私の胸元を触り始めた。

「あっ・・・・あのね・・・。安定期に入るまで・・・・控えたほうがいいって言われて・・・・。」

「なに・・・・。何時になったらいいんだろう・・・・。」

「杏子先生がいいよって言うまで・・・・」

「そうか・・・。」

「がっかりだった・・・・?」

「止むを得んな・・・・」

真澄さんはちょっぴりがっかりしながらも、一晩中私をしっかりと抱きしめてくれた。



シアワセを教えてくれた微熱は、私たちにかけがえのない命を教えてくれたものだった。

真澄さんはその日以来親バカ全開で胎教に勤しんでいる。

私はまだ目立つ事のないおなかをさすりながら、

「パパっておもしろいねぇ・・・」

と話し掛けている。



翌日真澄さんは杏子先生のクリニックにこっそり訪れ、死活問題とも言えるあの解禁日についてしきりに相談していたらしい・・・。



2.15.2003



<Fin>





□花音さんより□
37.5 これって体温のことよね??とそこからイメージした ものが、「ご懐妊」でございました。
マヤちゃんと速水さんのシアワセ一杯の姿を思い浮かべる事ができたら 幸いでございます。
わがガラカメ妄想クリニック院長の杏子先生には、美人産婦人科医 として登場していただきました。 
マヤちゃんの仕事に口をはさみ、マッスーにはおあずけを喰らわす あたりがさすが杏子先生でございます。
ホントお忙しい中UPしてくださった杏子ちゃん ホントありがとう!!
そして最後まで読んでくださった皆さま ありがとうございました!!





□杏子より□
待合室の乙女、花音ちゃんから、オメデタ話というハッピーなお題を頂きました。ほのぼの&ニヤニヤなお話ですね〜♪タイトルからしてとってもステキ!
しかしなんと言っても突っ込みどころは、杏子先生でしょう。花音ちゃんは、毎回毎回、杏子をあらまぁ、びっくり!の役に変身させて下さって喜ばせてくださるのですが、今度はなんと女医さん!!院長なったり女医さんになったり忙しいですな、ワシも。っていうか、こんな才女な役な上、速水さんの弱みを握るなんて…。スミマセン、スミマセン、スミマセン。一応謝っておこう。。。
楽しいかわいいお話、花音ちゃん、ありがとうございました!!





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