20 モノクロ
"a rosy life "
written by 小リス
「まぶしいな」  

いつごろからだろう 朝の光がまぶしいと感じるようになったのは

あの日、暗く冷たい海の底で自分の運命を悟った時、目に映る世界がモノクロに変わった
黒と白の冷たい世界 だれも寄せ付けない世界

それが、あの日初めて君をスポットライトの下で見た時、君の周りが虹色に見えた
あの日君に出会わなければ、紫の薔薇も美しいと感じることはなかっただろう
それに戸惑い 恐れ そして幸福

「うーん」

愛しきものがまどろむ朝

「おはよう、チビちゃん」

「おはようございます。速水さん」

彼女は俺の腕の中で 頬をほんのり赤く染め 照れたように笑う

参ったな そんな顔して俺を見ないでくれ まぶしすぎる

俺が目を細めていると心配そうに俺の顔を覗き込む

「どうしたんですか?」

またそんな顔をする 

はずかしすぎて決して君がまぶしいなんて言えない

「太陽がまぶしいなと思って」

そう言うと彼女は安心したようにまた俺の腕の中でゆっくり目を閉じる
そんな彼女のおでこにキスをすると彼女はくすぐったそうに肩を震わした

その少し微笑んだ寝顔はまるで天使だ

薔薇色の人生とはよく言ったものだ
まさに今 俺が見るもの感じるものすべて薔薇色だ

幸せすぎて時々怖くなる
二度とあのころに戻らないように
この時を決して逃がさないように

俺は幸せをぎゅっと抱きしめる

俺の幸せが小さくあくびをする



6.7.2003



<Fin>





□小リスさんより□
題名の「a rosy life」 ですが 真澄氏はなんだかいつも白目むいてとにかく自分の人生にネガティブな 感じなので幸せになってもらいたいなあって思って書いてみました。
薔薇色の人生なんてべたですが、王道を行ってて結構気持ちよくないですか!?





□杏子より□
子リスさんのデビュー作です。
モノクロ、というお題でそこに持ってくるかぁ!と膝を打ってしまいました。
確かにあの日、速水さんの人生は変わったものね。そして、そんなモノクロの世界に、朝日とともに色と光が差していく様子が 目に浮かぶようで、あったか〜い気持ちになりました。特に、最後の一文。ホロリ。
子リスさん、最後の最後で、勇気を出して初めての投稿!ありがとうございました!!





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