24 3K
" あなたと私に関する3つのK"
written by 杏子
「例えば、速水さん。 カッコいい、顔がいい、キザ」

”褒めているように聞こえないな。中身がないみたいじゃないか”

「褒めてますよ。充分。人の言うことは素直に聞きましょうよ。
はい、速水さんの番」

”すっかり君のペースだな。まぁ、いいが……。
駆け引き、警戒、掛け算。君の苦手なものだ”

「何それ。最初の二つはともかく、最後の一個、余計!」

”得意なのか?”

「知らないっ!!もう、意地悪……。
じゃあね、私も速水さんの嫌いなもの。
角砂糖、缶詰のみかん、缶切り」

”……”

「速水さんいっつも、手つけないで残すでしょ。コーヒーに添えられた角砂糖も、デザートにくっついてきちゃったみかんの缶詰も」

”それはそうだが、最後の缶きりはなんなんだ?”

「え、だって、いっつも缶開けるとき、私にやらせるでしょ?」

”それは君が、缶切りで缶をあけるぐらいしか、出来る料理がないからだ”

「ひっどぉぉぉい!!」

”違うのか?
食べ物でいいんだったら、君の好きなものぐらい、俺はいくらでもあげられるぞ。 ケーキ食べ放題、数の子、柏餅、きんぴら、カステラ、カツ丼、から揚げ、カレー……”

「3つでいいです!3つで!!
じゃぁね、案外速水さんが内緒でやってそうなこと。
賭け事、影でこそこそ誰かの尾行調査、口移し」

”なんだ?最後の一個は?いや、二つ目も聞き捨てならないぞ”

「身に覚えないんですか?」

”ノーコメント……”

「あ、逃げてるし。次、速水さんだよ、そろそろネタ切れ?」

”隔靴掻痒、狂言綺語、狐疑逡巡”

「?????」

”君の知らなそうな四文字熟語だ”

「速水さん、すっごい意地悪。そうやって人のこと馬鹿にして楽しい?ねぇ、楽しい?」

”君と話すのは楽しいよ”

「上手く、誤魔化しましたね。いつものことだけど……。
適わない、悔しい、これ速水さんへの正直なあたしの気持ち」

”一つ足りないぞ”

「だって、あとの一個は”恋しい”だもん。これ言ったら、悔しいもん」

”悔しいのか?”

「うん、だって、あたしばっかり、好き好き言ってて、悔しい」

”……好きだよ”

「あ……、ども……。いきなり言われても照れるし……。
速水さん、綺麗な言葉も言って。私に大事にして欲しいものは?」

”今日、黒い髪、観客だな”

「……うん、お客さんも今日も大事にします。
大丈夫、あたし髪の毛茶色くなんかしたりしないし。
速水さんにとって大事なものは?」

”君、北島マヤ、恋人”

「速水さん…、それ全部一緒だよ」

”分かってて言ってるんだから、突っ込むな”

「苦しい、哀しい、孤独。
あたしが、全部いっぺんにはもう二度としたくないこと」

”そんな思いはもう二度とさせない。俺が約束する。俺が……、守る。
君が今、したいことは?”

「う…ん、今、したいこと……。
えっと、恋がしたい、それから……。
…ん…っ、ちょ、ちょっと、はや…みさん、何?イキナリ」

”キスしたいって、顔に書いてあった”

「もう……。書いてないよぉ」

”書いてあった。
それから最後の一個は俺が言う”

「?」

”結婚しよう”



6.1.2003



<Fin>




人様に書いていただいてばかりで、自分でちっとも手をつけていなかったこの30のお題 の未書タイトルを見てて、なんだか一つだけ異様に浮いていた『3k』。なんとか、ならないかなぁ と、とにかくカ行の単語やら言葉を思い浮かべているうちに、思いついた二人の言葉遊びです。

会話だけのお話って、一度は書いてみたかったのですが、心理描写が出来ないので、実は難しいのね。 台詞だけだから楽だと思ったのに、アサハカでした。

どっちでもいいようなお話ですが、どうしても30のお題を埋めたかった私の苦しい遊び心だと思って、見逃してやってくださいませ。






30 Stories top / home