27 迷い子
"哀しい願い"
written by kineko
私はここにいます。

貴方のすぐ傍で貴方をみています。

みているだけなら許してくれますか?

それすらも許されなくなってしまえば、

貴方を見失ってしまったら、

私の心はどこかへと、はぐれて行ってしまいます。



お願いです。

貴方を見ているだけ、それだけでも許してください。







『あなたはただの女優で商品。』

あの人にそう釘をさされなくても、わかっていた。

私はわかっていたと思い込んでいた。

そう言われた言葉が頭の中で何度も繰り返していくうちに、

心の奥底には、 まるで反対の感情がじわじわと

確かな形になっていくが止められなかった。

それは口には出せない。

表には出してはいけない感情だ。

そういう事もわかっているつもりだった。



だけど・・・



「やぁ、おチビちゃん。今日はどうしたんだい。」

そう問い掛ける彼の言葉に、心が揺らぐ。

いつもと同じように、言葉を出そうと口を開く、

が出てくる言葉は、本心を誤魔化そうと、

必要以上にきつい言葉になる。

その言葉に、貴方は顔を曇らせ、私の腕をとり、こう言う。

「社交辞令くらいいえなくては一人前の女優とはいえないぞ。」

つかまれた場所が熱い。

叱られてるのに、腕に触れられて貴方のぬくもりをカンジられる、

そのことが嬉しい。

「はっ離してください!」

そう言い、わざと乱暴に振り払う。これ以上触れられていては、

奥底に鎮めていた感情が動き出す。

近づきすぎてはいけない。

本当は見つけて欲しい感情を、見つけられては、いけない。

こう、口走るのが恐くてその場を走り去った。

『お願いです。そのまま、つかまえていてください。どこかへいってしまわないように。』

貴方にとって私はただの商品です。

それだけで、いいんです。

ただ、私のこの感情は失くしたくないんです。

見つからないように、奥底に留めておきます。

それくらいはいいですよね?

見つかってしまったら、きっと拒絶されてしまう。

そうなったら、私はきっと何処へもいけない、

動けなくなってしまう。

ただ、貴方を見つめ、貴方の行く先を見つめていてもいいですか?



私の心が迷子にならないように・・・・・




2003.04.13



<FIN>














□kinekoさんより□
30のお題に無謀にもチャレンジしてしまいました。
拙い文章ですが、読んでいただけると幸いです。
マヤちゃんのが気づいてしまった 伝える事のできない状況で、生まれた恋心。
その心情が伝わればいいのですが・・・ お忙しい中、こんなに拙い私の文章に 素敵なタイトルと壁紙を作ってくださいました 杏子さまに感謝、感激です。
本当にありがとうございました。
読んでくださいました方も、本当にありがとうございます。          








□杏子より□
何も望まないマヤちゃんの心の悲鳴が聞こえるような、お話ですね。
詩のような独白文体がとても、とても切羽詰ったカンジが伝わってきました。
あぁ、迷い子マヤちゃん…。真澄さま〜、見つけてあげてぇぇ!!(哀願)
kinekoさん、哀しくも美しいお話、ありがとうございました。





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