□□第2話□□

 
 



written by キティ

 

 
 


真澄は社長室に入ると先週残してきた仕事を先に片付けた。
本当は直にでもマヤに連絡を取り、足の怪我の事を問いただしたい気持ちがあったが、何か考えがあって、この様に手紙を渡してきたのだから、先に手紙を読むことにした。
そうしたって、遅くはない。

手紙の入っている封筒はA4サイズの茶封筒だった。
糊付けされていたので引出しからペーパーナイフを取り出し手馴れた仕草で封を開ける。中を出してみようと覗いたら今度はB5サイズの白の封筒が入っていた。
茶封筒には何も書かれていなかったが白の封筒には表に名前が書いてあった。



「速水真澄 様」

今度も糊付けされていたので封を開ける。すると中には葉書サイズの薄紫色の封筒が2通と、色々なサイズの便箋やメモ用紙が1つの束になって入っていた。
クリップで留めてあったが、外したら順番がわからなくなるのではないかと心配した真澄はパラパラとページをめくってみた。だがどの紙の端にも番号がふってあり、少なからずこの大量の紙が万が一バラけてしまっても、読む順番が分からなくなってしまうという事が無いと分かって安心した。

真澄は「始めに読んで下さい」と書かれた薄紫色で無地の触るとザラザラした感触の封筒を開け同じ色の便箋を取り出す。3枚入っていた。が、読もうと思ったその時、最初の文字を見て絶句した。



「紫のバラのひとへ」



(マヤ!!)
真澄は思考が止まってしまった。何故?どうして?…疑問だけが脳内を駆け巡る。
マヤは自分が紫のバラのひとだということを知っていた?なんということだ!
冷や汗がでる。手紙を読むのが怖くなり、暫く動けなくなってしまったが、
先を読みたいとう気持ちが強くなりやっとの思いで文章を読み始めた。


『こんにちは、速水さん、そして紫のバラのひと。
いつもお世話になっています。最近はゆっくりご挨拶もできなくてすみません。
この場を借りてお礼を言っちゃいます。

突然のお手紙で驚きました?
私も速水さんにこの様にお手紙を送るなんて自分自身に驚いてもいるのですが…
そして失礼を承知でこの手紙を送る事をお許し下さい。
この手紙は「2つの顔」を持つ、あなたへのささやかな「復讐」なのです。
なーんて 復讐なんて大それたものではなく、ただの「八つ当り」です。

演ずる事を影ながら応援して下さった「紫のバラのひと」にお礼を言いたいというのが私の夢だった事、覚えていますか?結局あなたは最後まで名乗り出ては下さいませんでしたね。別に怒っているわけでは無いのです。速水さんが紫のバラのひとだという事は実はかなり前から知っていました(具体的にいうと「狼少女ジェーン」の時です)。
いつかきっと名乗り出てくれる!と信じて紅天女まで頑張りました。そしてあれから3年が過ぎました。きっとあなたは紅天女になった私にはもう、バラは必要無い、そしてご結婚されるので今更この生意気な小娘に正体を明かして、また事を荒立てられてはいけないと思われ、そのままになったのだと私は思っているのです。

でもやはり私はお礼が言いたい。
今まで本当に有難うございました。

私も少しですが大人になりました。お仕事も順調にさせて頂いています。そして紅天女を演ずる事になり以前の様にただ演ずる事が好きな女の子ではいられなくなりました。「仕事」として女優をする。大人になって責任を持たなくてはいけない事も覚えました。って速水さんから見たらまだまだ‘ペーペー’ですけど!
そしてこれまた少しですが、色々な事を色々な角度から考えられるようになったのです。

そして先日、ある事件?がありまして…(これは本文に書いてあります)
なので、思い切ってお手紙を書く事にしました。
直接会って…とも考えたのですが、なんだかご本人を前にすると上手く本当の事が言えないような気がして、文章力もない私ですが過去も振り返りながら感謝の気持ちと私なりに考えた色々な事を「紫のバラのひと」である速水さんに知ってもらいのです。

だって10年ですよ!知り合ってから。その間、本当の気持ちを1度だって言えた事はありません。そんな私が直接速水さんに10年分の気持ちを伝えられる訳が無く、また現実はそんなにドラマチックではありません。私が演じているドラマの様に相手への気持ちが他人から見ても分かる位に事が進めばどんなに良いか!


「復讐」と書きました。
ずうずうしい、とも思いました。ですが、速水さんが「紫のバラのひと」として私の人生に絡んできたのは事実です。最初にしかけてきたのは速水さんからだし!と強気に攻めてみる事にしました(笑)。責任とってもらおーじゃないのーっていう感じです(ウソ)。
えー長くなりましたが、これから読んで頂く本文も とーっても長いです。
10年分の思いを筋道立てて書くのは至難の業なので、思いついた事を思いついた時に書く様にしました。
だから内容も中途半端の所もあるし、用紙もバラバラでごめんなさい。番号はつけてあるのでその順番でお願いします。そしてこの手紙をどのように渡すかまだ考えていないのですが、第一候補が月影先生の三回忌の時にお渡しするというのです。先日マネージャーから日程を聞きました。うーん上手く渡せると良いのですが…
お忙しいのはわかっていますが、少しで良いので私のたわ言にお付き合いいください。
                                  北島 マヤ』


真澄は紫色の便箋を元の様に畳みなおし、封筒に丁寧にしまった。

「手紙か…」

真澄もマヤに何度も送っている…差出人を明かさない短い手紙。
もし、自分もこの様に手紙にして素直に自分の気持ちをマヤに伝えていたら…
と今更ながら考えた。口にだすとつい嫌味なことばかりを言ってしまっていた辛い過去。

(…やめよう。今更…)

真澄は次に読まなくてはいけない手紙を今日中に全て読めるか自信が無くなってきた。




04.08.2006





…to be continued









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