16 涙
"涙の理由(わけ)"
written by 風子

涙は女の武器って言うけど・・・
本当にそうなのかしら・・・・?

私はいつだって貴方の前で泣いていた

つらくて悲しくて・・・憎くらしくて・・思いっきり
大声で泣いてやったけど・・

貴方は微動たりともせず私を冷たく見詰めていた・・
去っていくその姿すら漏れ出でる涙でかき消された

私の涙は貴方の鉄の結界にはただの水滴にしかならないの

留まらない悔し涙・・・・

泣きはらした私の視界にぼんやりと見えてきたのは
紫の薔薇だった・・

私の涙を止める事が出来たのは、あの花束だけだったのよ



目は口ほどに物を言うっていうけど・・本当にそうなの・・?

分かっているの?・・今の私の涙の理由を・・・

愛している・・この気持ちが言葉より重く大きく
瞳から不思議なくらい自然と零れ落ちてるの・・



ねえ、私の目を見て・・言葉に出来ないこの気持ちを
解って・・・私の瞳を見詰めて・・・
目を逸らさないで・・

貴方には見えないの・・・・・?
私のこの切ないほど募る思いを・・
ねぇ、映らないの・・・
狂おしいほど貴方を想うこの気持ちが・・

この涙は私の心が奏でるトレモロなのよ・・・・

貴方はそれでも踵を翻しゆっくり私から去っていった。

細く延びた貴方の影が・・何故だか悲しげに見えるのは
涙で曇ったそれは私の幻・・



貴方のトワレの残り香がすら私の涙を誘い
動き出す事も出来ないのよ・・



そして、今この花束が私の涙を止めないの・・・

止めどもなくでる涙が花束を色づけない・・



私の涙が頬をつたい・・一粒一粒花束へと溶けていき
一枚一枚花びらとなり舞い落ちて
いつしか散らしてしまうわ・・・



色すら無くしてしまうわ・・



ねえ、気づいて
花束が枯れてしまう前に・・

ねえ、分かって
涙が涸れてしまう前に・・・



2.22.2003



<Fin>





□風子さんより□
彼女はいつも泣いてるかな・・なんて 思ってたら彼女の涙が変化している事に気づいて 書いてしまいました。
悲しみ怒りの涙から、恋を知った女の涙・・・
そんな気持ちを込めて書きましたが・・・・

拙い独り言でごめんなさい・・

独り言をいつも快く引き受けてくださる杏子さんに 感謝感謝です。
読まれて頂いた方々・・ありがとうございました。





□杏子より□
またまたまた!ESCAPEの詩人・風子さんの美麗詩・第3弾でございます。
思えばマヤちゃんも成長しましたよねぇ。「速水さんなんて大っきらい!!」とお得意のセリフを投げつけつつ涙してたのに、今じゃぁ「あなたが好きです、速水さん!」で、涙だものね。涙の理由の幅が広がると、女の幅も広がるんでしょうか・・・。
しっとり哀しい、でも美しい作品、風子さんいつもありがとうございます!!





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