□□第4話□□





written by キティ

 

 
 


『この手紙は先日の桜小路君と会った3日後に書いています。
デートでの事、後で書くつもりです。ノロケではないので読んで下さい。

今日のお話はこの手紙を書こうと思ったもう1つの事件の事。
事件って程のことでは無いのですが、紅天女でご一緒している先輩の役者さんが言った言葉が印象的でした。
「非日常の世界だと思って憧れていた役者も、長くやって職業となったら、舞台を降りるとやはり自分も日常の世界の1人でしかない。」って。

まだ駆け出しの私ですが、でもその意味わかるような気がします。
速水さん、私最近体つきがしっかりしてきたと思いませんか?
紅天女の舞台を始めて自己管理を意識する様になりました。食事にも気を使っているんですよ。前みたいに役になりきるだけでは長く舞台に立てないと気付きました。
非日常を楽しみにして来て下さるお客さんの為に、自分の日常をしっかりして舞台に立つ。
なーんか昔の私からは想像つきませんね。ワザと熱出した事もありましたっけ??

その役者さんがお話の最後に、
「マヤちゃんはまだ若いから、悔いを残さない様に色々な事にチャレンジしなさい。」
と言ってくれました。そしたら、歳をとるってどう言う事なんだろう?と考えました。
今はまだ20代だから色々無茶ができるけど、30歳になった自分ってどういう風になっているの?とか…
速水さんは若い時に、(今もお若いですが…ハイ)あーあれやっておけば良かったなぁ
なんてこと、ありましたか?


そして私は悔いを残さない為に 紫のバラのひと、速水さんにこの手紙を書いています。』


真澄はコーヒーを飲み終えて、心を落ち着かせるためにタバコを吸った。
真澄はマヤの事が羨ましい、と思った。
マヤは真澄と幼い頃の境遇が似ていると言った。

でもその先が違う。
希望を捨てず自分の信じた道を進むマヤ。
希望を捨てて進んできた自分。
マヤの告白に動揺する自分。
情けなくてしかたがない。

                                        


No.5
『桜小路君との交際宣言の時はご迷惑をかけました。
でも里美さんの時ほどではなかったでしょう?
「時代が変ったのよ」と水城さんは言ってくれました。

桜小路君はとても優しい人です。

そして、私はとてもズルイ人間です。

私には、桜小路君ではない、「他に好きな人」がいます。

桜小路君はこのことを知っています。
知っていて私に優しくしてくれているのです。
私が誰を好きなのか薄々知っているようです。
でもその事について1度も聞かれたことはありません。

そうです、私はとても残酷な人間なのです。』


真澄はマヤと桜小路との交際宣言の時の事を思い出していた。
嬉しくてしかたがないっといった感じの桜小路と、
恥ずかしそうにずっと下を向きっぱなしのマヤ。
二人りの間にそんな秘密があるとは気が付かなかった。

紅天女がマヤに決まり、相手役だった桜小路が私生活でも恋の相手となって、最初マスコミは大都がしかけた宣伝かと疑っていたようだ。が、以前からの2人を知っている者がインタビューで祝福を送ったりしたこともあって、里美の時のようにバッシングも無かった。また2人とも、もう大人だ。それほど騒がれる事無く過ぎていった。
桜小路がマヤの前に付き合っていた女性の事は事務所社長として情報は得ていたが、細かい事まではマヤの手紙を読むまで知らなかった。

それにしてもマヤはこの日記のような手紙を自分にいきなり送りつけてきて、どういうつもりなのか?そして桜小路ではなく他に好きな人がいるなどと自分に告白している。
その好きな人とは誰だろう、と気にはなるがもう自分には関係の無い事だと…
真澄は強く唇を噛んだ。

時計は既に昼を過ぎていたが、紫織と午後に特に何かをすると約束もしてないので真澄はこのままこの手紙を読むことに決めた。



04.10.2006





…to be continued









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