| 恋する二人の夏休み 2
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| written by wanko
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かき上げられた髪の隙間から覗く耳たぶに、真澄の唇が触れた時、堪らず声をあげた。
「あっ…、速水さん、あの…、えっと…」 何か言いたいことがあった訳ではない。 逃げたかった訳でもない。 ただ、溺れそうで…、波に飲み込まれてしまいそうで…、息継ぎがしたかっただけなのだ。 (どうしよう…)咄嗟に視界の端に入ったものにマヤは救いを求めた。 「あ…花火っ!!すごい!花火までありますよっ!これも速水さんが準備してくれたの? あたし、花火も絶対やりたいって思ってたの」 上擦りながら、至近距離には少し大きすぎるボリュームでマヤが言った。 耳を押さえながら、苦笑を滲ませる真澄。 「…あぁ、そうだ。 さっきも言ったが、俺はもう君と一緒に遊び倒す”覚悟”ができてるからな。 そろそろ、君も…”覚悟”を決めた方がいいぞ…」 真剣で、少し意地悪で、それでいて深い愛情を湛えた瞳でそう言う真澄に、マヤの胸はドクンと鳴った。 ![]() その日の午後、二人は文字通り遊び倒して過ごすことになる。大きなスイカを持って、海辺まで行き、学校が終わって遊びに来ていた小学生の軍団を誘って、スイカ割りをした。 「二人じゃ食べきれないし、大勢いた方が楽しいよ」というマヤの提案だったが、この夏休みを誰にも邪魔されず、二人だけで…と考えていた真澄は内心面白くなかった…………筈なのだが…。 スイカ割りのトップバッターはマヤ。別荘から持ってきたタオルで目隠しをされ、3回程、その場でグルグルと回転させられた後、長い棒を持たされた。一歩一歩、恐る恐るという足取りで、スイカの方に進んで行く。 「お姉ちゃん、もう少し、右っ!!」 「あっ!!ちょっと行き過ぎちゃったよ。左に戻って」 子供達からは盛んに声援が飛ぶ。 素直に従ったマヤはスイカの前まで導かれ、大きな掛け声とともに棒を振り下ろした。 「エイッ!!」 「あぁ、惜しいっ」 「残念〜」 等と子供達から声があがる。 スイカに当たりはしたものの、力が足りなかったのか、ヒビさえも入らなかった。 その後、何人かの小学生がチャレンジしたが、なかなかスイカを割ることができない。 最後に真澄の順番が回ってきたが、これが、なかなか、どうして…。 それまでは素直に誘導していた子供達が一斉に意地悪を始めたのである。 「 おじちゃん、もっと右だよ」 「違う、違う。左に向かって」 「ううん、反対側に行っちゃってるよ。真後ろに進んで」 それらの声に翻弄され、真澄はあっちに行ったり、こっちに行ったり…、なんだか子供達に遊ばれているような感じだ。 どうやら子供達の中でガキ大将に君臨している「たくちゃん」と呼ばれる子の差し金らしい。クリクリの坊主頭に利発そうな瞳、一見とても可愛い男の子であるが、何故だか、やたらと真澄と張り合っていた。 マヤのことは皆、「お姉ちゃん」と呼ぶくせに、真澄のことは「おじちゃん」扱い…これもたくちゃんからの指示らしく、元々彼女との年齢差を気にする真澄にとっては癪に障る呼び方であった。 子供達の声は無視して、真澄はなんとかマヤの声だけを頼りに進み、見事スイカを割ることに成功した。 湧き上がる歓声の中、目隠しを取って、「どうだ」と言わんばかりに、たくちゃんを振り返った真澄。 小学生を相手に、心底得意気な、本当に嬉しそうな、子供達と同じ屈託のない笑顔を持つ真澄がそこにいた。 皆でスイカを食べた後も、「カニ捕り」だの、「砂山崩し」だの…次々と子供達から提案される遊びに、嬉々として参加する二人。 「あたしのカニの方が大きい♪」 と、マヤが言えば、真澄も負けじとより大きなカニを探しにかかる。 「あー、今のは君が棒を倒したぞ!」 「そんなことない!!セーフだったもん」 等と、言い合いを始め、まるで誰が子供かわからないはしゃぎように、小学生達の方が呆れ気味の表情を浮かべていた。 気がつけば、日は西に傾き、子供達もパラパラと自宅に戻って行く。 最後の一人となったたくちゃんも、マヤに何事か囁いて帰って行き、その後姿を二人で見送った。 「あいつ、最後に何て言ったんだ?」 「ふふ…、”おじちゃんのことが嫌いになったらいつでも言って。僕がお姉ちゃんの彼氏に立候補するよ”ですって!最近の小学生ってスゴイのね」 「…全く…、俺が何年も君を口説けずにいたって言うのに、会ったその日に口説こうとするなんて…。 油断も隙もありゃしないな…」 「あたしね…、速水さんとつきあうようになって…。 それまで知らなかった速水さんの色々な顔を見ることができるようになって…。 もう、知らない顔はないと思ってたの。 でも、今日、速水さんが子供達と遊んでいる時の顔は、見たことがなかった。 すっごくイイ顔してたよ」 「…あぁ、俺にも確かにあの子達位の時があったんだよな。 すっかり忘れていたけど、あんな風に毎日、楽しく遊んでいた時があったんだ。 たくちゃんのようにガキ大将だったんだぞ」 「ガキ大将の速水さん?想像できるような、できないような…。 でも、イヤミ虫な子供よりはよっぽどいいかもね!!」 フフフ…と笑いながら、マヤは真澄の左手に自分の右手を絡ませる。 そうして、二人は長い影を従えて、別荘までの道のりをゆっくりと戻っていった。 ![]() ”ドキン、ドキン、ドキン…” 自分の鼓動がまるで耳元で鳴っているかのように煩く響き渡る。 まるで、凪いだ海の寄せては返す波音と呼応するかのように…。 寝室のバルコニーに出て、星空を見上げながら、マヤは呪文のように繰り返していた。 ”大丈夫、大丈夫、大丈夫…” ”怖いコトなんか何もない…” ”覚悟なんか、ずーっと前からできてるよ” 東京で見るのとは比べ物にならない程の、圧倒的な星空の下、静かに深呼吸を繰り返してみる。 すると、少しずつ、少しずつ、マヤの中の不安やとまどい、ためらい、怖れ…そう言ったものが溶け出して、夜空の星に吸い込まれていくようであった。 「流れ星でも見えるのか?」 背後からの声に、マヤは静かに振り返った。 髪のしずくをバスタオルで拭き取りながら、真澄がマヤの隣に来て、同じように星空を仰ぐ。 「ふふっ、さっき、流れ星、見つけちゃったよ」 「何か、願い事できたのか?」 「…それどころじゃないもの。今の私… ……… 今、この時が一杯一杯で…、悠長に願い事なんかしてる場合じゃないもの…」 そう言いながらマヤが細く吐いた吐息で、二人を取り囲む空気が震えた。僅かな震えが、二人の間で共振し、大きなうねりを引き起こす。そのうねりに抗うことなど、もう意味を成さないことであった。 真澄はマヤの瞳を見詰めながら、マヤの左手を掴み、自分の口元まで持っていくと、手首の内側にくちづけた。そして、無言のままマヤを抱き上げ、寝室の中に入っていった。 広く、白く、ひんやりとした肌触りのシーツの海に、そっと、優しく横たえられるマヤ。 パジャマの胸が大きく上下している。隣に滑り込んだ真澄は、マヤの髪を梳きながら、その瞳を覗き込む。 「お嬢さん、君の”覚悟”はできたと思っていいのかな?」 砕けた口調で、軽さを持って、放たれたその言葉。 けれども、真澄の瞳は正面からマヤを捉え、真剣な光を湛えている。抑えきれない情熱が込められた瞳…真澄の心のうちにある愛情や思慕、そして欲望を映し、濡れて光るその瞳に見詰められながら、マヤはコクリと頷いた。 最初は額に落とされたキス、そのまま伏せた瞼に移動する。 そして、頬、鼻筋、唇へ…。 徐々に、緩やかに、深くなっていくくちづけ。 上唇を甘噛みされ、下唇を舌で辿られ、歯列をなぞられる。 漏れる吐息。 微かに聞こえる波の音。 窓から差し込む月明かり。 二人を見守る…その光。 真澄のくちづけは首筋に降り、髪に絡められていた指は、いつの間にか、マヤのパジャマのボタンを外していた。肌蹴られた胸元から覗く下着…左胸の薔薇に真澄はそっとくちづけを落とす。 「これが、あたしの”覚悟”だよ…」 マヤがポツリと呟いた。 「いつもより少しでもいいから、速水さんに綺麗だと思って欲しくて…、一番素敵な自分を見せたくて、初めて買った勝負下着だよ…」 冗談のように紛らわせながら、それでも少し震えるマヤの言葉。 泣き出しそうな笑顔のマヤ。 真澄の中にどうしようもない程の愛しさが満ちてくる。 じっとしてはいられないほどの衝動を伴って…。 「あぁ、マヤ、とっても綺麗だ。もっとよく見せてくれ」 すっかりパジャマを剥ぎ取られ、下着だけになったマヤの美しさに真澄は魅せられた。 白く華奢な、しなやかな肢体。 薔薇の刺繍に守られている柔らかな胸。 すっきりとした腰のライン。 そのどれもが、真澄が欲してやまないものであった。 もう一度、薔薇の刺繍にくちづけた後、真澄はマヤの首筋にも情熱の赤い薔薇を散らした。 かつて贈り続けた紫の薔薇に、 負けない程沢山の―― 赤い薔薇を散らした――――。 ![]() 結局、真澄が楽しみにしていたスケスケワンピを、マヤはこの夏休みの間に着ることはできなかった。 それも真澄自身の所業が原因であるので、致し方あるまい。 マヤの身体のそこここに散らされた赤い薔薇の花びらを、スリップドレスも白のビキニも隠してはくれない。2日目も張り切って、外に遊びに行こうと誘うマヤ。 ベッドから出て行こうとするマヤを捕まえて、その事実を告げる真澄の顔は、どこか楽しげで…。 「もう、速水さんのせいですよっ!!」 「私、今日は海で泳ぎたかったのにぃ…」 「あのワンピだって着たかったのに!」 「初めてのビキニだって買ったのに!!」 頬を膨らませ、尖らせた唇から、次々に繰り出されるマヤの言葉。 そのマヤを宥めながらも確信犯の笑みを浮かべる真澄。 「はい、はい、俺が悪かったよ。そろそろ機嫌直してくれないか?」 「あぁ、もうっ!全然悪いと思ってないでしょ!」 「私の気持ち、わかってないでしょ!」 「スケスケワンピで速水さんを悩殺するつもりだったのにっ!!」 その言葉に反応して、ニヤリと意地悪げに微笑む真澄。 「君こそ、俺の気持ちをまるでわかってないな」 「え?」 「そんなもの着なくても、…いや着ていない方が俺を悩殺するには好都合だぞ」 その言葉とともに、シーツの海に縫いとめられるマヤ。 「試してみるか?」 「!!!(赤面)!!!」 こうして、スケスケワンピも白のビキニも出番はなく…、 二人で過ごす夏休みは、真澄の思惑通り、誰にも邪魔されずに過ぎていくのであった――。 01.08.2005 ![]() □wankoさんより□ <あとがきという名の取り立て> 私の拙い文章をここまで読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。 色々と言い訳したいことは、山々やまやまマヤマヤあるのですが…、それよりも何よりも、私はこのアトガキこそを書きたかったので、もう少しお付き合い頂ければ、幸いです。 ”ESCAPE”−”Info”−杏子さんのご挨拶より抜粋 『実は、休止中にもいくつか地雷を踏んでおりました。”スケスケワンピ”だの”ふんどし”だの……。(しかし、なんでよりによってこのお題……)そういった作品も、書けそうになったら書いてみたいとちゃんと思ってます。』 そう…杏子さんの「そんなあなたに恋をする」を発表当時に読まれた方なら、覚えていらっしゃると思うのです。 「スケスケワンピの夏休みも書いちゃうかも〜ん」な杏子さんの地雷踏み発言を…。 この借菌を踏み倒されては、ワタクシ泣くに泣けず、死んでも死にきれませんっ!! …と言う訳で、一世一代の取り立て方法として、このような無謀なことにチャレンジしてしまいました。 結局、今回、マヤちゃんはスケスケワンピを着ることができてません。 これでは真澄さんは(そして全国1億3000万のスケスケワンピ愛好会の皆様も)満足しません。 だから、杏子さん、マヤちゃんにスケスケワンピを絶対着させてあげて下さいね♪ シツコク魔ってマスから♪ そして最後に…また、杏子さんのお話が読めること…本当に嬉しく思っております。 これからも、ゆっくりと、じっくりと、杏子ワールドを魅せて下さいねん♪ ![]() □杏子より□ ガラパロ界各地で、恐怖の取立て犬として、【猛犬注意】の張り紙を貼られているwankoさんですが、ついに杏子、あのwの字から取り立て成功!!!と思ったら、アータ……。 これは、なんと【取立てパロ】だったんですねぇ。その狡猾な罠に気づき、wanko嬢を「スケワン刑事」と命名させて頂きました。ただでバンジーなど誰がするか、ボケ!のwanko笑いが聞こえてきそうで、巨乳も1サイズ落とすほどにアテクシ縮み上がりましてよ。 でもね、患者の体を張ったプレイには体を張ってお答えしようではあーりませんか! 悲願!!スケスケワンピ!! 絶対、書くよーーー! wankoちゃん、あなたの愛のムチムチに、とっても愛を感じているワンコ♪ |
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