第5話







※以下R18です。18歳以上の大人の方のみお楽しみ下さい。
読後の苦情など一切受け付けません。自己責任でお願いします。





















「あのっ……、あたし……、ほんとに初めてで、それで──」

 沈黙に耐えられず、気恥ずかしさにも耐えられず、つい最後の悪あがきでそんなことを口にする。真澄の美しい指先が、おしゃべりな唇にそっと触れる。し─っ、とまるで鍵をかけるかのように。

「心配しなくていい。君が嫌がること、痛がることは何一つしない。俺にまかせろ──」

 マヤの唇に触れた真澄の指先は、そのままゆっくりとマヤの顎をなぞり、喉を掠め、鎖骨を撫ぜ、体の輪郭を辿り下りていく。バスローブを脱がされ、素肌が露になると、マヤの体に馬乗りになった真澄が上体を起こし、その体を目を眇めるようにして眺める。

「奇麗だ──」

 そんな訳ない──。
 咄嗟に否定する言葉が喉元から出掛かるが、それよりも次第に露になる真澄の肉体美に目を奪われる。
 隙なくスーツを鎧のように着こなす普段の真澄の姿は、あくまで仕事の現場で見せる、真澄のほんの一部分に過ぎなかった事を思い知らされる。その禁欲的な スーツの下には、こんなにも魅力的な肢体を隠し持っていたのだと。鍛え上げられた引き締まった腹筋と分厚い胸板、その滑らかな肌に触れてみたくなる。
無意識に伸びたマヤの指先が、真澄の胸の隆起した筋肉を辿る

「男の体を見るのは初めてか?」

 そんなマヤの様子に、真澄が苦笑する
 マヤは意識の半分をその滑らかな肉体の感触に奪われたまま、コクリと頷く。

「男の体を知るのも初めてになるな。出来るだけ痛くないようにするが……」

 痛みの事など、マヤは何も気にしていなかった。真澄に与えられる痛みであれば、それすらも愛おしい。甘んじて受け入れる覚悟は出来ていた。けれども真澄が言うところの「痛くないようにする」という言葉の意味を、この後マヤは嫌というほど思い知らされる事になる──。


 まずはゆっくりと唇を蹂躙される。
 唇をこじ開けられ、舌と舌が混ざり合う。ざらりとした違和感が次第に消え、二つのそれは溶け合い、やがて同じ温度になる。上手に出来ている自信はまるで なかったが、真澄のキスは滑らかで甘く、ついていくだけで恍惚とした気持ちになる。キスのあまりの柔らかさに、頭の芯が痺れてしまい、上手く考えがまとま らない。すでに真澄の波に翻弄されていっている事を自覚する。
 
時折漏れるくぐもった真澄の低い吐息が寝室の暗がりを震わせ、部屋の濃度が増していくのが嫌でも分かる。
 ギュっとシーツを握り、ひたすらにマヤはその未知の快感に耐える。キスだけでこんなに感じてしまっているなど、恥ずかしくてたまらなかった。
 

 先ほど指先が辿った場所を、今度 は真澄の唇がゆっくりとなぞる。顎先から首筋を辿り、鎖骨のくぼみにもキスを落とす。やがてその形の良い薄い唇が、マヤの右胸の頂を捉える。丹念に舌で乳 首を転がされ、瞬く間にそこは硬くしこってくる。逆の左の乳首は真澄の左手で同じく、眠っている神経を呼び起こすかのように指先でじりじりと弄ばれ、たち まく赤く隆起する。
 熱い手でそうやって胸を揉みしだかれていると、マヤの体内でも切ない疼きが高まってくる。その圧を逃すように、何とか気を逸らすように、マヤは無意識に両足を擦り合わせ逃げようとする。
 少し強めに甘噛みされた瞬間、ひっ──、マヤは息を呑んでのけぞる。背骨がベッドからしなるように浮き上がった。
 そんなマヤの反応に満足したかのように、真澄はウエストの中央のラインを唇で辿って臍を通過すると、マヤの下腹部へとためらいなく舌を寄せる。

「だ、だめっ!! そんなところ──」

 思った通りの反応を示すマヤに対して、真澄はこともなげに言う。

「だめじゃない。こうしないと後でつらい。いいから俺に任せろ。君を少しも傷つけたくないんだ」

 そう言って、両手で太腿を押し上げると、勢い脚を開かせる。あまりの羞恥心にマヤは両手で顔を覆った。
 真澄の舌が、下から上へ割れ目に沿って、そっと秘裂を一度這う。たったそれだけのことで、ゾクゾクと経験したこともない快感がマヤの背中を駆け上がっ た。やがてその舌先は、眠る陰核を一度でひたりと捉えると、掘り起こすように丹念にその根元を舐め上げる。男を知らない、まだ誰にも触れられたこともな い、淡いピンクの花芯は、生まれて初めてのその刺激に悲鳴をあげる。
 構うことなく、真澄はその舌先で執拗に花芯を一枚一枚剥ぐようにして、剥き出しにしていく。
 やがてゆっくりと真澄の指が差し込まれる。生まれて初めてその場所に異物を感じたというのに、マヤのそこはたちまち真澄の指を吸い付くように飲み込む。 差し込まれた真澄の中指が様子を見るように、ぐるりと一度旋回すると、何かがねっとりとその指にまとわりついたのを感じる。真澄もそれに気付いたのか、満 足気に微笑を漏らす。

「大丈夫だ。ちゃんと濡れている。君のここは、君よりもずっと素直で感じやすいようだ」

「そんな……こと──」

 真澄の口からそんな卑猥な事を言われ、カッとなって思わず上半身を起こそうとしたが、すぐに真澄に押さえつけられ、今度は指と舌、その両方からの責め苦を味わうことになる。
 自分の意思とは無関係にぬかるんだそこは、真澄の長く美しい指によって隘路を開かれ、真澄の紅い舌がチロチロと花芯を弄ぶ。時折、強めにその中心を吸われると、信じ難い衝撃が走り、マヤは嬌声をあげる。
 真澄の指の関節が当たる、僅かな部分の反応すら真澄は見過ごさず、マヤの体の反応を掬い取っては攻め続けられた。

「だ……、だめっ──、こんな……こと──」

 自分がどうなってしまうのか分からず、人差し指の爪を歯に当て、マヤは必死に耐えようとする。

「我慢するな。君がどうなっても俺が受け止める」

 そう言って真澄はマヤの限界値を煽るようにして、指を抽挿する速度を激しくあげていく。

「あっ……、あっ……」

 壊れたようにマヤは短い嬌声をあげる。声を抑えることすら出来なくなってくる。

「君のここがどうなってるか、自覚はあるのか?」

 喘ぎ声に軌道を塞がれ、とても言葉を発せられない。マヤは激しく頭を左右に振る。自分がどうなっているかなど、知る訳がない。ただ、未だかつて経験したこともない快楽の波に今にも呑まれそうになっているのに必死に耐えているだけだ。

「俺の指をこともなげに食い締めている。これでどうだ──」

 その言葉のすぐ後に、若干の窮屈な感触にマヤは一瞬苦悩する。指の本数が増えたのだ。

「……んっ──」

 そう言って顎を引いて、衝撃に耐えるようにしてマヤは息を呑む。何かとてつもない事が今にも起こりそうな気すらする。

「速水さん……、怖い──、なんか怖いの……」

「大丈夫だ」

「でも……、なんかヘン、なんかくるの──」

 自分でも何を口走っているのか分からない。足の爪先から甘い痺れが伝わってくる。何かが起こるのは、もう間違いない。

「いいから達け」

 目隠しのまま、崖の端まで歩かされ、最後にその言葉に背中を押されたかのように快楽の縁からマヤの体は転落する。最後はむしろ悲鳴も出なくて、ただ足の爪先を異様な角度になるほど曲げてシーツを押えつけた。

「……っ──!!」

 意識が激しく飛散し、やがてバラバラに散らばったそれらが荒い呼吸を繰り返すうちにゆっくりと戻ってくる。性を剥き出しにされた雌猫のようにマヤの体は切なく震える。

「達ったな……」

 満足気に真澄の声がそう呟く。まるで獣がしとめた獲物の血をぬぐうように、真澄はマヤの愛液で濡れた自らの唇を手の甲でぬぐった。その動作、その視線、全てが美しい雄の獣の所作に見え、マヤは恍惚とする。
 
 ──こんなに美しい人に自分は抱かれるのだ。

「疲れたか? 少し休むか?」

「え? 速水さんは?」

「俺のことはいい」

 そう言って体を上半身のほうに寄せてきた真澄が、ゆっくりとマヤの額をなでる。

「速水さんも気持ちよくなって……。それとも……、私じゃ無理?」

 その言葉に真澄が呆れたように顔をしかめる。

「煽るな。くそっ──。君が悪い。君が火をつけた。知らないからな──」

 そう言って激しく口付けたかと思うと、上体を起こし、マヤの両足を掴んだ。挿入しやすいようにM字に曲げて、脚をぐっと押し広げられる。卑猥な体勢に慌てて真澄のほうを見上げると、その美しい裸体にハッとしてマヤは息を止める。
 剛鉄のように鍛え上げられたその肉体は、何一つ無駄なものがない。例えていえば美術館に飾られた精巧な彫像のように。
 部屋に差し込む雪明かりがその美しい肢体を闇夜に浮かび上がらせる。

 ──なんて美しい人なんだろう。

 思わず目を奪われる。
 無造作に掻き上げた前髪が顔にかかり、長い睫毛が影を作る。

「挿れるぞ……、いいな──」

 逞しい幹に真澄は手を添えると、マヤの入り口を何度かなぞる。狙いを定めるかのごとく、ノックをするように浅く数回挿入を試みると、ついに一気に貫かれた。想像以上の衝撃にマヤは思わず目を瞑り、真澄の腕を掴んで耐える。
 やがて衝撃の余波が体中に収められると、マヤはゆっくりと目を開ける。心配そうな表情で真澄がじっとこちらを見下ろしていた。

「大丈夫か?」

 大丈夫ではなかったが、何がどうなれば大丈夫なのかも分からない。マヤはただコクコクと必死に頷く。

「無理するな」

 そう言ってやめようとする気配を真澄から察知すると、マヤは真澄の二の腕を握った手に力を込める。

「やめないでっ! やめられちゃうほうが哀しい。私は大丈夫だから、大丈夫だけど……、どうしたらいいか分からないだけなの、ほんとなの。だから……、速水さんの好きに……して?」

 潤んだ瞳で必死にそう訴える。

「君って子は本当に──」

 そこから先は呆れたように真澄は飲み込んだ。代わりにねっとりと舌を絡めるような濃厚なキスをされる。甘やかされるように唇を貪られると、痛みに支配されていたマヤの感覚は、その舌の上で転がされるあめ玉のように蕩けていった。

「ゆっくり動く。出来るだけ自制するつもりだが、無理かもしれない──」

 そう言って眉根に皺を寄せ、一瞬の苦悶の表情を真澄は浮かべた。普段、隙のない真澄の顔しか見た事がなかったマヤには、その表情はどこか意外で特別なも のに見え、こうしてあられもない姿で肌を重ねるということは、その人の表情や感情すらも剥き出しにするものなのだと気付く。
 
 再びマヤの両足を掴んだ真澄は、脚を押し開くとその具合を確かめるように視線を落としたあと、ゆっくりと動き出す。

 ようやく真澄を奥まで受け入れると、マヤは浅い呼吸を繰り返す。昂りすぎる何かを逃すように。ベッドは大きく軋みはじめ、枕が落ちた。

 まるで目の前のこの人に征服されたかのような感覚に目眩がする。痛みよりも何よりも、これこそが自分がずっと求めていたものなのだとすぐに分かった。肌 と肌の吸い付き方、深い部分で結合する感覚、真澄の硬く強ばったものを自分のもっとも柔らかい部分で受け止める感触、その全てがこの人は自分のために在 り、そして自分もこの人のために在ると思わざるをえないほどにしっくりときた。

 一方でこれ以上ないほどに体は敏感に火照り、胸の先がチリチリと熱を持ち始める。まさに体に火をつけられたのだと分かる。

 一体自分はどうなってしまうのか、押し寄せる官能の波にさらわれまいと、マヤは必死で真澄を追いすがった……。











 2018.3.3


…to be continued


 












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